トイレ・歯みがき

【トイレトレーニングがうまくいかなくて】
「私の体験談」
「‘抱っこ法’な日常」
「穴あきオムツでトイレトレーニング」

【トイレトレーニングがうまくいかなくて】

 3歳になったHちゃんが1年ぶりに相談に来られました。4月から幼稚園入園を控え、トイレトレーニングがうまくいかないという相談でした。お母さんはいろいろ工夫してつき合っておられるようでしたが、なかなかうまくいかないようでした。  トイレに誘っても行かないので困りますとお母さん。何回声をかけても行かないで、そのあげくに漏らしてしまうので、それが続くとイライラしてしまうと言います。1年前に何回か相談に来られて、気持ちを大事にということを学んで、気持ちを大事にしてきたけど…とも。あれ、気持ちは大事にするけど、行動はお兄さんとして支えるとお伝えしたつもりが…伝わっていなくて残念。  そこが1つのポイントと思い、「行こうよ」と手を添えて誘うところから始めましょうとお伝えして、お母さんに「行こうよ」と、Hちゃんの手を引いて誘っていただきました。ほんのちょっと尻込みしましたが、すぐに立ち上がって、さっさとトイレに行くことができました。あれこんなにすんなり行ってしまっては、手を添えるやりとりの練習ができなかったね。家では甘えがでて、ここではよそゆきということもありますが、お母さんが本気を出したということも大きいのだと思いました。  トイレから帰ってきたHちゃんをお母さんにほめてもらおうと、お母さんに抱っこしてというのですが、逃げられてしまいます。そこで援助者が捕まえると、そこはすんなりではなくひっくり返って抵抗。すごい暴れようになりそうだったので、先ずは援助者が抱っこしました。えびぞりになってもがいて気持ちの我慢のようす。手を添えるの前に、感情のストレス発散が必要だったのですね。これがもう1つのポイントでした。そういえばそういう抱っこはしばらくしてないとお母さん。  日頃一人で頑張る癖が付いていて、そうすると感情のストレスがたまって、やりたいのにできないことになり、Hちゃんも自信をなくしてしまう。自信をなくすともっとできなくなってしまう。そんな悪循環もあったようでした。  ひとしきり発散してお母さんの抱っこになったときには、身を任せてゆったり抱かれていました。そこでお兄さん心に働きかけ、お母さんにも手を冴える練習になる体操をしましたが、すんなりやらせてくれました。これまた練習にはならなかったけど、いい感じなので終わりました。  1つ目のポイント、気持ちは大事にするけど、行動はお兄さんとして手を添えて励ますということ、2つ目のポイント、気持ちのストレスを発散する抱っこが必要ということ、に合点がいったお母さん、家でやってみますと帰られました。お母さんも一人で頑張らないで、また手伝わせてね。

「私の体験談」

 息子がちょうど1歳10か月の頃でしょうか、「しあわせ子育て学」を読み、もしかしてこれでちょっと救われるかもしれないという思いで、阿部先生(癒しの子育てネットワーク)にお手紙を書き、通信をいただきました。それというのも私は妊娠6か月の頃、実家の方である問題をかかえ、毎日暗い日々を過ごし、ある時それも夜中の2時過ぎに、全身が震えるという体験をしたことがあり、息子が生まれてからも、そのことで心身の発達や成長に影響がないか、ずっと気がかりなのがきっかけでした。 ちょうど市の1歳6か月検診の時、歯みがきの指導があり、“子どもはたぶん泣き叫びいやがりますが、痛くて泣いているのではなく、縛られているのがいやで泣いているのだから大丈夫。お母さんのまたの間にねかせて動けないようにしてやってください。毎日続けてやっているうちにあきらめて泣かなくなります”という指導がされました。そり時はそんなものかなという思いで帰りましたが、それからの毎日は歯みがきをめぐっての、親と子の戦いという感じでした。しまいには、今までおとなしくやらせていたジャンプーまでも泣くようになり、私にとっても息子にとっても、一日で一番いやなことは、歯みがきとシャンプーでした。夜になるのがいやで憂鬱でした。“毎日こんなに泣いていやがっているのに、本当に無理矢理やっていいのだろうか。本当にあきらめておとなしくやらせてくれる日が来るのだろうか”こんな思いで歯みがきを無理矢理していました。 通信を読み、この歯みがきもどうにかなるかもしれないと思い、ネットワークの先生に電話をしましたが、あいにく多忙で不在だったため指導が受けられず、恐縮とは思いながらも先生にお手紙を書き、お手紙での指導を受けました。2回ほど読み返し、とにかくやってみようと思い抱っこしました。初日はあまりの泣き叫び、暴れ方に私の方が驚き、“いやー、離してー離してー”と叫ばれ、離してしまい、息子はそのまま悲しそうに眠ってしまいました。 その後また、通信とお手紙を何度か読み返し、今度は意を決して頑張ってみました。毎日2時間ほど大泣き、大暴れ、本当に疲れました。3、4回やった頃からでしょうか、少しずつですが、先生のおっしゃる通り、歯みがきをさせてくれるようになったのです。とても信じられませんでした。5か月以上も毎日泣き、泣きすぎて吐いてしまうほどの大泣きの歯みがきで、歯ブラシを私が持っているだけで、泣きながら逃げていった子が、しまいには“歯みがきするよ”と言うと、自分から私の膝の上に横になり、あーんと大きく口を開けるのです。もう、今までの5か月はなんだったんだろうと思ってしまいました。歯みがきだけではありません、シャンプーの前にも、ちょっとこれはほんのちょっとだったのですが、抱っこして、無理矢理やったことを心から謝り、シャンプーする理由を話すと(もちろんちょっとは泣きましたが)、“シャンプーする”とまた自分から言い出したのです。もう、抱っこ法と阿部先生、そして息子に感謝せずにはいられませんでした。 でも抱っこしてみて、一番私が深く感じたことは、歯みがきよりシャンプーより、息子に対する愛情が、以前より強くなったことだと思います。そしてたぶん、息子の私に対する愛情も……。それは、心が通じあえたということでしょうか。抱っこ法をしてから、見えなかった子どもの心が、少しずつ見えてきたような気がします。まだまだ未熟ですが……。本当、子どもより私の方がずっとずっと未熟です。親をしあわせにしてあげたいと思っているのですね。 これからも抱っこを通じて、子どもの心、私自身の心を、ゆっくりと見つめていきたいと思います。

「‘抱っこ法’な日常」

 三人の子どもが一人になる時は何でもとっても余裕が出てくる。時間も気持ちもとてもゆとりがあっていい感じ。当然残った一人には抱っこ法から学んだ‘癒しの時’をちょこちょこ日常に取り入れてあげられる。時間も気持ちもたっぷりと。 ここ最近の第三子(1歳)のダダこねの一番は「歯磨き」。きっとこれは困っているママさんは多いのではないかと思う。 「さあ、歯磨きしよう!」と誘うとまずは逃げる。それを遊びの感覚で追いかける。「捕まえた~」と軽くハグして一度また逃がす。それを追いかけて「捕まえた~」とハグしてみる。体に力が少し抜けたかなと思う頃に体を横にさせて自分の股の間に誘っていく。まだまだ体が抵抗しているから今度は体をシーソーのように支えながら寝かせたり起こしたりして「歯磨きイヤだ~(子どもの気持ち)、でも歯磨きしよ~う(ママの気持ち)」を繰り返して、子どもが反発する力に抵抗したり従ったりしてみる。体を横にしたころから泣き始めているけど私はニコニコ笑顔で遊んでいるかのようにしている。 たった歯磨きだけの事だけど子どもは日常のストレス全般をこの時に私にぶつけてきているから、時間のない朝はいつも通りな状態で事を運ぶけど時間がある夜は‘たった・・・’の事にじっくり付き合ってみる。そのうち泣きながらでも口を開けてじっとしていてくれる。 そんなやりとりのあった次の朝は、保育園に行く事をとても嫌がった。「あ~いつもこれだけ嫌な思いを頑張っていてくれたんだ」と思えたので園の玄関先で充分「嫌だ」の気持ちに付き合ってあげて、しばらくした所で先生の所へ連れて行くとすんなり先生に身を預けて私にバイバイをしてくれた。その顔はまだ涙で濡れていたけどしっかりと私の顔をみて「いってらっしゃい」と言ってくれている感じだった。 私はまた子どもに‘ママ’に成長させてもらったのです。

「穴あきオムツでトイレトレーニング」

<相談一回目>

 初めて和く輪く舎を訪ねた。朝から緊張。Mには「お話を聞いてもらいに行こうね。」と言って連れて行った。和く輪く舎に着いて、部屋に入って、その雰囲気に驚いた。ちょっと広い和室の集会室みたい。入りロに鷲尾さんが座っていて、挨拶してくださった。奥には阿部先生と思われる方。鷲尾さんに持っていったメモを読んでもらった。そして最初に言われた言葉が「お母さん、おめでとう!」、なにが?って感じだったが、運動会のダンスをMが踊れたことを書いていたため、そのことを言ってくれたとわかった。

 しばらく話しながらMはおもちゃで遊び、抱っこの実践をすることになった。私がMを抱っこすると、意外にも力が入っていなくて抱かれ上手だとか。いろいろ話してもMはへらへらしたり文句言ったりするだけで、まったく泣きそうにない。いったいどうするのかなあ、と思っていると、鷺尾さんがMを抱っこした。そして一分もしないうちにMは大泣きを始めた。他人の抱っこだと、親に抱かれるよりも、心の歯止めが外れやすいのだそうだ。ものすごい泣き方にちょっと驚いた。鷲尾さんは、「これはMちゃんが泣きたくて泣いているんだから、いっぱい泣かせてあげればいいのよ」とおっしゃる。とても不思議だった。

 途中から私に変わって抱っこしたが、もう抱っこしているのが精一杯。鷲尾さんが足を抑えてくれて、二人がかりでの抱っこ。こんなに泣いたら次回来るのが大変だ、なんてことも頭をかすめながら、私も泣けてくる。15分もなかったかもしれないが、相当泣いた、そして体を開放すると泣き止んで落ち着いてきた。正直なんだかわけがわからなかったが、泣き止んだ後のMはとてもさっぱりした顔をしている。私が寝転んで鷲尾さんに足を持ってもらい体操をしていたら、Mも笑顔になってきた。そして帰り際には「また来る」と言った。本当によくわからなかったが、でもなんだかいい気分。


〈家で抱っこ〉

 ピアノの練習を嫌がって、なんだか苦しそうだったので、抱っこをしようとしたが、抱っこしてもぜんぜん泣き出さない。いろいろ話してみても、話をそらしたり、笑ったりで、ちっともすっきりしない。とてもふてくされている感じだったので、多分方法は間違っているだろうが、「もうピアノやめちゃおうか」と言って、無理やり泣かせてしまった。でも、一度泣き出したらずいぶんよく泣いて、その後顔がまたすっきり。しばらくしてからピアノの練習をしたら、いつもよりもずっと落ち着いて上手に弾いた。抱っこの効果なのかな?


〈ピアノのレッスン〉

 ピアノのレッスンでは、ちゃんとは弾かなかったが、お友だちにつられてでたらめに音を鳴らしていた。触らないよりはましかな。


〈相談二回目〉

 今日はもう一組親子が来ていたので、Mは最初はちょっと固い顔をしていた。鷲尾さんに、「あなたのお母さんはあなたの前で泣いていましたか?」と聞かれた。泣いたところはあまり見たことがないので、そう答えて、母が病気がちなことと、私が泣き虫な子だったことを話した。鷲尾さんは「泣くことがあなたの生きる方法だったのね。あなたがそうやってがんばらなかったら、お母さんはきっとダメになっていたと思いますよ」と言ってくださった。そして、「自分の欲求を満たせないままに育った人は、子どもに何か教えるときに、強く言えなくなる。これはどうしようもないことなのよ」と。私にはピンとくるものがあった。

 私はいつも、どうして厳しくしつけられないんだろう、という思いを持っていた。Mに「嫌だ」「できない」等の否定的な言葉を言われてしまうと、つらくなって強く言えなくなり、引かざるを得なくなる。これ以上言ったら、この子がつらいだろう、だめになってしまわないか、と。だから、「Mを他の人が育てたら、もっと普通の子に育っていたんじゃないか」と今まで何度思ったことか。そしてそのうち、「Mがこういう子だから仕方がない」と、あきらめるようになっていた。病院で「無理強いは駄目」と言われて、その思いに拍車が。でも、鷲尾さんのその一言で、救われた気がした。どうしてどうしようもないことなのかはよくわからないが、自分にその部分が欠けていることをきちんと認識することができた。私がMをダメにしてしまっていたのかな。鷲尾さんは、「もっとMちゃんにこうなってほしい、ああしてほしい、と言う要求をしてもいいのよ。今までMちゃんの気持ちばかりを優先してきたから、これからはお母さんの要求をMちゃんにのんでもらうの。Mちゃんにどういう子になってほしいかというビジョンを立てて、それに向かっていけばいいのよ」Mに私の望んでいることを要求するなんて、今のこの子には無理だと決め付けていた。ずいぶんひどい話だ。最悪。

 その後、鷲尾さんがMに「体操しようね」というと、「嫌だ、体操なんてやらない」と言い出した。「それでもやるんだよ」と言われて大泣き。ここからまた抱っこが始まった。今回は泣くと言うよりは怒っている。「体操なんてやりたくない、離して、痛い、がんばんない、がんばりたくない、二人とも大っ嫌い、もう帰る、今すぐ帰る」等、どれだけ悪態をついたことか。泣いて怒っているのに、こっちの言うことに結構冷静に反応して反抗してくるので、鷲尾さんも笑っていた。今回は気持ちよりも体力勝負って感じ。かなり長い時間やりあっていて、そのうちMがぐったりして力を抜いた。私には疲れきってぐったりしただけにしか見えなかったが、鷲尾さんいわく、「お母さんが抱ききったんですよ」と。そしてその後、Mに「体操やろうね」と言ったら、「いいけど」と言ってちゃんとやった。あれだけ嫌がっていたのに、ホント魔法のよう。そして最後はやっぱり「また来る」と言った。


〈遠足〉

 遠足。役員として私が付いていくので、Mには前々から手もつなげないし、抱っこもできないことを言い聞かせていた。そして当日、まったく問題なし。仲良しのお友だち二人と元気に遊んで、立派だった。


〈トイレトレーニング再開〉

 9月にトイレに座るようになって、「10月になったらパンツなしで座ろうね」と言っていたのが、できなかった。その頃は「無理強いはダメ」と思っていたし、無理にやったらもっとこじれるんじゃないか、と怖かったので、嫌がった段階で、やめていた。考えてみれば、以前は「やだやだと言いながらがんばる」という考えが私の中にはまったく存在しなかった。スムーズにできなければ、後は無理強いだけだった。

 10月の後半から、またトイレに座るようにし、「11月になったらパンツなしで座ろうね」と約束させた。そして今日、私が朝から超緊張していた。今日は創立記念日で幼稚園は休み。一日がかりになるかな。失敗したらどうしよう、鷲尾さんにファックス送らなきゃ、なんて考えながら、恐る恐るトイレに誘ってみた。昨日から「明日がパンツなしで座る日だね」と言ってあったので、途中まで行って「嫌だ、パンツはいて座る」と言い出した。もう覚悟はできていたので、「だめだよ。約束だからパンツなしで座ろうね」と言ったら、予想通り大泣き。しばらくはつないだ手を引っ張り合って張り合った。それから抱っこ。「トイレがんばらない、座らない、嫌だ」等、いろいろ言う。「でもがんばろう。お姉さんになろうね。Mはいい子だよ。おりこうさんだよ。大事なMだよ」と言うと、「おねえさんになんかなんない、いいこじゃない、おりこうじゃない、大事じゃない」と…。

 しばらくの間ずっとこんなやり取りをして、その後ふと気づいて「今までママは強くなくてごめんね。Mがお姉さんになるのをがんばって応援してあげられなかったね。鷲尾さんのところでママはMがいっぱいパワーを持っていることが良くわかったから、これからは強くてやさしいママになって、Mがお姉さんになるのをいっぱい応援するからね。今までごめんね」と謝った。Mはそれまでに増して大きく泣いた。謝っている間、ものすごく泣いた。それからちゃんと抱っこされて、泣くのがおさまってもずっと抱っこされていた。なんだか、もうパンツなしで座れなくてもいいや、という気分になった。座れなくてもこの抱っこは成功だと思えた。

 落ち着いてから、トイレに誘った。嫌だと言ったので、「最初はパンツはいたままで座ってみよう」と言って連れて行った。パンツをはいたまま座った。なので、座ったまま、「無理やりはしないから安心してね」と言ってパンツを少しずつ下ろしていったら、自分でお尻を少し上げてパンツを脱いで座れた。まだ無理だろうと思っていたので、私がいきなり泣き出してしまった。そしたらそれを見たMが「ぎゃー!」大泣きして立ち上がってしまった。「今日はこれでいいよ」と言ってなだめて、すぐに落ち着いたが、パンツなしで座るのがやっぱり嫌だったんだ、とちょっとがっかり。でも気分はなんだかよかった。

 そしてその日のタ方、Mは「パンツなしで座ったらママまた泣いちゃう?」と言いながら、自らパンツなしでトイレに座った。うれしかった。うれしかった。本当に魔法みたい。本当に鷲尾さんに会えてよかった。


〈予防接種〉

 インフルエンザの予防接種。注射や検査が苦手で大泣きするので、いつもは当日自転車に乗せてから注射に行くことを話していた。でも、阿部先生の本でそれがいけないことと知り、今回はずいぶん前から話して聞かせた。行くのを渋るかと思いきや、ちゃんと納得して出かけられた。病院で待っている間は「怖いなあ、怖いなあ」と何度も言っていたが、今までは不安があると固まるか怒るかだったので、意外な反応。注射の際は、診察室のいすに座ったとたんに泣き出して、相当な大泣きをしてきたが、終ったあと、「がんばったね。えらかったね」と言うと、素直に喜んだ。これも今までにない反応。いつもは「がんばってない。えらくない」と終ったあともしばらく怒っていた。今回は前もって言ったことで、自分でちゃんとがんばったという実感があったのだろう。


〈相談三回目〉

 今日も固くなっていた。他の子がいて緊張しているようだ。トイレにパンツなしで座れるようになった話をした。鷺尾さんはまた喜んでくださった。そして、Mを抱っこしてトイレの話。Mは泣いて怒った。「Mちゃんがトイレでおしっこをすることは、横綱に立ち向かう様なこと。もっと小さなことから自信をつけていったらいいのでは」と鷲尾さんに言われ、確かにと納得した。この一ヶ月でMはずいぶんしっかりしてきた。不安に対して固まることが少なくなり、ちゃんと「怖いよ」とか「やだなあ」とか言うようになった。今までの私はそういう言葉を聞くのがつらくて、あえて言わせないようにしていた気がする。こちらが聞く耳を持ったということなのか。こうやってかわいく泣き言を言ってくれるならつらくもならない。しばらくの間、毎日トイレに座らせて、泣くことですっきりすればいいということになった。うちではなかなか泣かないので、これで泣いてストレス発散できればいいのだが。


〈オムツして便座に座って〉

 最近はクラスのクリスマス会の準備に追われ、忙しい。Mはトイレには毎日座るものの、おしっこをしたい時は10数えて降りてしまう。泣くような雰囲気は全くなし。でも、おしっこする時はオムツをして便座に座ってすることができるようになった。もう一歩踏み込めばいいのだろうが、今は私に余裕がないので、しばらくこのままに。


〈相談四回目〉

 今回はMの話を聞くことに。鷲尾さんが「Mちゃんのお話聞かせて」というと、「言わない!」と言って口を一文字に閉じてしまう。鷲尾さんに抱っこしてもらい大泣きするが、何を聞こうとしても「言わない、話さない!」。鷲尾さんいわく、「お母さんと違って、親から得られるものはなんとしてでも得ようとしている。普通もらえないとわかってあきらめる子が多い中、たいしたものよ。この子は大丈夫。でも付き合う方は大変ね」

 そして「トイレトレーニングを始めた頃になにか変わったことはあった?」と聞かれた。入園一年前のその頃は、人見知りを少しでも改善できればと思い、親子体操や、ヤマハの音楽教室に通っていた。その中で、親から全く離れることができず、泣いたり固まったりしてばかりのMにイライラしていた。他の子との違いを感じて、私自身つらい時だった。そんな心境が影響したのかと思ったが、鷲尾さんは「お母さんが子どもを思ってしたことだから、それはそれでよかったのよ」と言ってくださった。

 他には、と聞かれ、その頃私は今では持病のようになっている首をひどく痛めていた。首の骨がずれて周りの筋肉が炎症を起こし、全く動かない状況で、5日間くらいカイロ治療に通っていた。そのことを話すと鷲尾さんはそれが原因では、とおっしゃった。予想もしないことだった。首がそうなってしまう原因がはっきりしていないことから、首にストレスをためてしまってそうなるのでは、と。確かにそれならそのことでMに影響が行くのも納得できるかも。よくよく考えてみると、首を痛めるのは、帰省前が多い。長い休みは必ず実家に帰ることにしているが、その前に痛めることがほとんどだ。正直帰省する日が近づくと憂鬱になる。そんな自分が嫌でもある。最後に、Mのトイレが今停滞している状況なので、おしっこをするように先に進めるべきかどうか聞いてみた。鷲尾さんは「そうね、難しいところよね」とおっしゃった。


〈クリスマス会〉

 クラスのクリスマス会。私がクラスの役員をやっているため、ここのところ準備で忙しかった。クラスの親子兄弟総勢60人以上が集まる。Mはこういう会が大の苦手だ。特に、ゲームにいつも参加できなくて、一人固まって私のひざに座っている。今回は私が司会等で忙しいので、前もって話をしていた。ゲームもどういうゲームをやるのかを事前に教えておいた。結果、3つのゲームのうちの2つに参加することができ、私のところにも全く寄ってこなかった。少したくましくなって嬉しかった。


〈覚悟ができて〉

 クリスマス会も終わり、私が一段落ついた。前回の相談のとき、鷲尾さんにトイレトレーニングを進めるべきかを聞いたとき、鷲尾さんは「そうね、難しいところよね」とおっしゃった。そのことをずっと考えていたが、もしやるべきでないならきっとそう言ってくれただろうと思い、私の覚悟ができればやればいいんだと思えた。あと6日で5歳になる。今やろうと思った。昨日Mには「トイレでおしっこできるように明日からがんばってみようね」と話をしてあった。「え~!」という答えだった。幼稚園から帰ってきて「おしっこ!」と言うので、「じゃあパンツなしで座ってみて!」と言った。Mはまだ余裕で、「10数えたら降りるからね」と言いながら座った。降りようとするMを押さえつけて、「おしっこ出るまでここにいよう!」としばらく押さえた。最初はヘラヘラしていたが、だんだん私が本気だと言うことに気づいてきて、大泣きを始めた。しばらく降りようとするMを押さえつけて泣かせた。そしてそれを押しのけて逃げていって、部屋でも泣いていた。15分くらい。今日はこの辺でいいや、と思い、「明日もあさっても、トイレでおしっこができるまでやるからね。今回はあきらめないよ。二人でがんばろうね」と言って、オムツでおしっこさせた。


〈根負け〉

 今日も幼稚園から帰ってきた後トイレに座らせた。Mも考えたようで、今日はあまり泣かない。座らせて押さえつけてもあくまでもおしっこを我慢する気のようだ。おしっこをしたくても相当の我慢がきくことは過去に実証済み。昨日と同じくらいがんばったが、私が根負け。


〈小さな穴あきオムツ〉

 今日も同じくやるつもりだったが、トイレに誘っても「おしっこしたくないもん!」と涼しい顔をしている。「じゃあオムツにならする?」と聞くと即「する!」。「じゃあ、オムツはいてトイレに座ってするんだよ。その前にオムツもなしで座ってからだよ」と言って、トイレに座らせておき、オムツに小さな穴を空けて持っていった。気づかずにそれをはいてトイレに座っておしっこをした。わずかにおしっこが下に落ちたので、「今おしっこ下に落ちたよ。気づいた?すごいね。できるじゃん!」と言ったら、不思議そうな顔をしている。脱いだオムツを見せた。穴を見たら嫌がるかと思ったが、全くそんな気配がなかったので、しめしめ!


〈穴あきオムツ作り〉

 幼稚園に行っている間に、穴あきオムツを何枚も作る。少しずつ穴を大きくしていって、オムツが濡れないくらいにできるといいな。


〈5歳の誕生日〉

 M5歳の誕生日。トイレトレーニングは5歳には間に合わなかったが、もうオムツが全く濡れないくらい大きな穴の空いたオムツでしている。あと一歩。


〈足入れ部分を切った〉

 もうオムツが濡れない大きさの穴になっているので、思い切って足を入れている部分を切った。嫌がるかと思ったが、意外にもすんなりはいて、おしっこをした。ヤッタ~!よかった!これでオムツなしでもできるようになる。本人も嬉しいようだ。


〈オムツの腹巻き〉

 明日から帰省するので、腹巻のようなオムツをなしでできるようにしようとしたが、また意外にもこれが取れない。もう5センチほどの帯でしかないのに、それで安心感を得るようで、「もうこれもなしにしようよ!」というと大泣きになる。とりあえず帰省中はこのままで行こう。


〈帰省中〉

 子ども用便座とオムツの腹巻で、どちらのうちでもできた。


〈相談五回目〉

 今日はMが初めて行くのを嫌がった。錦糸町の駅から顔がこわばって、暗くなっていた。部屋に入っても、はじめは私に抱きついて離れなかった。鷲尾さんに抱っこされて泣き、今日は顔を何度もたたかれた。怒っていた。トイレができたことで、一応終了となった。私の不安がMに影響していたのだ。まだ不安なことがいろいろあるが、後はMががんばるだけ。私はできる限りのことをしてMを応援して行こう。その前に私が不安を払拭しなければ。鷲尾さんは「お母さんのことはお父さんに任せていいんです。夫婦とはそういうもの。実家に帰って面倒をみなくちゃ、とか、間違っても家族が犠牲になるような形をとらないこと。親は子どもが元気に楽しく暮らしていることで一番の元気をもらうんだから。心配するなら、お母さん亡き後のお父さんのことを心配しなさい」とおっしゃった。正直肩の荷が降りた感じ。どこかで私は父一人に母の面倒を見させて、遠くで幸せに生活していることに後ろめたさを感じていた。でも、私が幸せにならなければ、家族を幸せにできないということが、今回のことでよくわかった。今回で終了ということだったが、Mが少し駄々をこねて、なかなか帰ろうとしなかったため、3月にもう一度来ることになった。


〈腹巻きなしでできた〉

 トイレでおしっこができるようになったものの、まだオムツのゴム部分だけになった腹巻(?)をしているので、一週間前に「2月になったら腹巻なしでできるようにしようね」と言ってあった。その時は「え~!やだ~!」と言っていた。今日、「今日から2月だから腹巻なしでする練習始めよう!」と言うと、「Mもう腹巻なしでしてるんだけど!」と。びっくり。そういえばここ4、5日、トイレの戸を閉めて、鍵まで閉めて一人でおしっこしていた。どうも、腹巻なしでできるようになったことが照れくさかったらしい。鷲尾さんが、「その腹巻はMちゃんが要らないと思ったときに、自分でポイッて捨てちゃうわよ!」とおっしゃったが、そんなに簡単にはいかないだろうなあ、と思っていたので、びっくりしてしまった。でもすごく嬉しい。ちゃんと成長している。


〈幼稚園のトイレ〉

 幼稚園に行った時に、トイレに連れて行った。まだ幼稚園のトイレではしたことがない。案の定、こわばって固まって、パンツを脱いで座るまではいったが、おしっこをすることはできなかった。幼稚園でもできるようにならないといけないことをMに話し、「先生と練習するのとママと練習するのとどっちがいい?」と聞くと、「ママ」というので、先生に話して、何度か幼稚園に練習に行くことにした。


〈お友だちの家でできた〉

 今週になってから、子ども用便座を使わずに座れるようになった。そして今日お友達のうちで初めてトイレでおしっこできた。