発達障害

【手を添えて教えてね】

 3歳のGちゃんは、言葉が遅く、保健所の検診で専門医を紹介されて病院に行き、発達障害の診断を受けました。赤ちゃんの頃から過敏で夜泣きもひどく、苦労をして育ててこられたようです。

 相談室に通ってこられて半年、今では言葉も増えて、簡単な会話は成立するようになりました。でもまだ行動面でうまくいきません。集団で動けないし、言うことを聞けません。相談室では、癒しの抱っこに並行して、励ましの抱っこもしてきていたのですが、日常にお母さんが取り組めるようになる時が来たようです。手を添えて一緒にやることの大切さを、お母さんに体得していってもらうことになりました。日常ではどうしても言葉で伝えて、それで通じないでお母さんはイライラという繰り返しのようでした。

 手を添え体を支えてのやりとりが大事なことは、今までもお伝えしてきていたのですが、今回改めてお話しすると、お母さんから意外な疑問が出されました。「手を添えてやることになれてしまうと、本人に甘えができて、いつも頼るようになってしまうのではないでしょうか」と言われたのです。そうだったんだ、そう言う疑問があったのでは、こちらからお伝えしていても、お母さんがやる気にならなかったのは当然でしたね。大切なポイントが、思いがずれていて伝わっていなかったなんて、申し訳ないことでした。

 手を添えるというのは、こちらがやってあげてしまうことではなく、本人がやるのをただ支えるということなんですね。つまりは気持ちを支えることなんでよね。手を添えているだけで、触れているだけで、子どもは勇気をもらい、やってみようという力を出しやすいのですよね。特に自信をなくしているお子さんには、その小さな一歩を踏み出す勇気を、手を添えて体を支えてもらうことで持てるのですよね。

 そして、手を添えて体を支えていると、子どもの気持ちが直に伝わってきて、こんな気持ちでいるんだということがわかります。やろうとするけどできない心許ない感じや、やりたいでもできないと葛藤しているようすが、伝わってくるのです。それから、そんな気持ちがあるときに、イヤイヤと感情表現しやすくもなります。イヤイヤをひとしきり表現して、ストレスが発散できると、やろうという気持ちが大きくなり、勇気も出てくるのです。

 Gちゃんもその日は、お母さんと積み木積みの課題を、手を添えてやってみました。10個の積み木積みは、本来のGちゃんなら簡単なことのはずですが、最初はなかなか積もうとしないし、2~3個積んでは崩してしまい、やる気のなさを見せていました。でもお母さんは体でその葛藤を受け止め、手を添えて勇気を支えてくださいました。するとある時点でGちゃんは、さっさと積み終えました。そしてほっと肩の力を抜いて、お母さんに甘え泣きしていました。お母さんも納得されて、これからは何かにつけて、口だけではなく手を添えて導く大切さを実感してくださいました。