心がつながる

「KとA」
「あなたがすき」


「KとA」

〈ぱーと1〉

 KとAは私の娘達です。長女のKが3才、次女のAが1才です。Kは妊娠中へその緒が首に巻きつき逆子、それに羊水不足の環境で出産は帝王切開という、険しい道のりを経て生まれてきたのですが、その後、低体重の為保育器での10日間の生活!!試練の連続を頑張ってきた日々だったんでしょう。1才半になった頃でも母親にコアラのようにしがみつき、他の子どもが自由に遊んでいる中、母親から離れようとしませんでした。私達の両親や他の子のお母さんに抱っこされるものなら、ひきつけを起すのでは?という泣きを周りの人達に浴びせていました。

 そんな中Aの妊娠がわかり、Kにもべったり出来なくなるからという事で、保育園へ1ヶ月に1回お試しで預ける事になりました。我が子Kはなかなかのもので、預けて1時間もすれば保育園から「これ以上泣かせたらかわいそうだから」とお迎えの強制TEL!!高い保育料を支払う事、何度か続きました。これではいけない(お金の事ではありません?)と思い悩み、阿部先生の所へ。2回のセッションで阿部先生に抱っこ法を受け、母親も私もしっかり抱き止める経験をしました。今回はセッション内容を細かく説明はしませんが、首元に触れた時、初めて明瞭な言葉の「いたい」を訴えていました。胎児の時のへその緒の首まきで苦しかった思いが、よみがえって来たようでした。

 その日しっかり泣ききって自宅に戻りました。その日から気持ちのバリアーが程よく取れた様に、どんどん積極的に、皆の前では母親から離れ自分を表現するようになり、自宅では母親に子どもらしい甘えん坊になりました(最近では、ひょうきんなキャラと下ネタ?ばかりを叫んでいて・・・)。それでも基本的には、私達のとっても頑張り屋さんの性格を引き継いでいるので、『頑張りすぎているかな』と思った時、自宅で抱っこのセッションをしています。甘え泣きが上手になったKは、かわいさ満面の思い切り大きな泣きと涙の中、短時間のセッションですっきり元気を取り戻す事が出来ています。

 そんな光景を、Aは興味深そうにいつも2~3歩離れたところで見ていました。「私は・・・ちょっと・・・今は・・・いいや・・・」と自分に確認するかのようにしていました。そんなある朝、Kの歯みがきするしないから抱っこのセッションが始まり、一通り流れが終わるが、その場でじーっと見ているAがいました。私が手まねきをすると自ら膝元に来て横抱きの姿勢になっています。私は軽く体を保持してみましたが、全く体に緊張入っていなくてダラ~ンとしていました。A自身、Kと何か違うと感じたようで、おもむろに「うえ~ん」と泣き真似をし始めました。当然ながらそれも違うと感じたAは、しばらくは声を出していましたが、目をキョトンとさせ困っていました。

 私は「じゃあお手伝いをするからね」という気持ちで背中を何度かさすり、トントンと軽く叩くとみるみる感情が溢れのけぞり、大粒の涙とかわいらしい泣き声で気持ちを表していきました。初めての抱っこのセッションの経験なので、大きな泣きを越えてたのち、ゆっくり立て抱っこし充分に落ちついたあと母親の所へ。しばらく母親の元で泣き甘えをし元気になりました。もともと積極的で、人の面倒を見たい気持ちが強い1才児のAは、この日を境にどんどんKと同じ事がしたい、出来る事ならKの面倒も見てあげたい気持ちが生まれ、時折、姉⇔妹の役割を交換してお互い楽しんでいます(そんな時Kは『こぱAね』といっています)。

 抱っこ法に出会い、子どもが好きな私はもっともっと愛しく思えるようになり、家族って私の宝なんだと感じる日々になりました。今までは子どもの泣き声を聞くと、愛しい気持ちの中に「かわいそう」という感情が出てきたのですが、今では「かわいい」って思えています(時々は、うるせ~と思いますが)。二文字の違いが大きな私の気付きになっています。これからも抱っこ法には子どもたち・妻・私と、たくさん癒していってもらおうと思っています。


〈ぱーと2〉

 今回は、家族旅行に行ったときのエピソードです。私達家族プラス姪っ子Nの5人で旅行に行きました。お菓子工場の見学や美味しい食事、みんな大好きな温泉とわいわい元気に遊んでいました。子どもたちは大分疲れたと思いましたが、旅行の中でのテンションは決して彼女たちを休息させてはくれませんでした(もちろんそれに付き合う私達夫婦も・・・)。

 楽しいお風呂も終りお楽しみのアイスクリームを皆で楽しんでいました。Kはシャーベット状の棒アイス、Nはクリームソーダーの棒アイス、Aは紙パックの緑茶で、おのおの快適な時間、私達夫婦には待望の休息の時間がやってきました。このまま旅行初日が無事終わると決して疑わなかった私でしたが、楽しい旅行には想い出作りが必要なのか、突然Kにアクシデントが舞い降りてきました。ナント楽しく食べていた棒アイスは時間とともに溶け出し床に落ちたのです(そう、シャーペット状のアイスは溶けやすいのです)。あまりのショックに5秒ほど口を大きく開けこの悲劇をしっかり味わった後、とてつもなく大きな叫びを温泉のロピーに響きわたしました。

 それを見た店員さんが迅速な対応で、汚れていないアイス部分を救出しお皿に移してくれました。お姉さんらしく上手に食べたいと思っていたK、失敗してしまったショックからそのアイスを受け取らず、もっとパワーを上げて泣き叫びました。店員さんに私がアイスを受け取り、立て抱きのまま抱っこをしました。疲れていた事もあるから、思考回路が混線しているようだったので、言葉はそれほどかけず、上手に食べたかったねと共感のみしてしっかり抱きとめ続けました。

 Kはいつものように、「いたい。いたい。ママー、ねね」と繰り返し訴えています。徐々に体の力もぬけて、泣きも、かわいい声で思いっきり泣いていました。するとひとやま越えた後に、人たちに鋭い視線が送られていることに気づきました。そう、ここは温泉のロビー、泣いて「痛い、ママー」を訴えている子どもを抱きとめるパパは、周りからは虐待パパとして存在していたのです(しかも後で温泉のパンフレットを見たら、刺青の方が沢山入るための苦情が多く、最近入店拒否をしたという土地柄でした。そして周りに、ワイルドな家族が多いとも後で気づきました)。

 私も周りの人からそのような視線を浴びた事で可愛そうな気持ちが出てきたので、ひとやま超えたところで、マッサージが終わったママの元へ行かせました。子どもたちには当たり前の日常の為、抱き終えた後NがすぐにKのそばに来て、一緒にママの所へつれて行ってくれました。Aは本当にいつもどおり、一通り終えたKを見たら、私の所にニコニコでやってきて、横抱きに勝手になり体に力を入れて気持ちを出そうとしていました。今、Aの要求に答えると、「あかちゃんにまで虐待パパ」への視線を感じそうだったので、「今はやりませんよ」と伝え、我慢してもらいました。

 驚いた事におとなたちの厳しい視線とは裏腹に、知らない子どもたちはKの抱っこが終わると、私のところへやってきて私に遊びをせがんで来ました。暫く遊んであげると子ども同士の遊びが始まり、仲良しになっていきました。やっぱり子どもの感性は鋭いなあと思いながら、知らない子どもたちに、「私をまわりの冷たい視線から助けてくれてありがとう」という思いになりました。まあその後、その子どもを連れて帰る親御さんは無言で連れて行ってしまいましたが・・・。それでもいいんです。私はたすけられたのですから。楽しい旅行のちょっとした思い出作りの抱っこでした。

「あなたがすき」

 今日、NHKの「みんなのうた」で、「あなたが好き」(作詞・吉田隆/作曲・沢田完/歌・大地真央)が流れていました。Rたんが夕食を終えて、TVをつけたら流れて来ました。そしてまだご飯を食べてたSちゃんが、
 あたたかい あなたがすき 
 わらってる あなたがすき 
 おこってる あなたがすき 
 ないている あなたがすき
の歌詞が流れた時に、 「ママ、ママはSちゃんが怒っていても好き?」 って聞いてきました。 「う~ん、そうやね。怒ってるSちゃんはきらいじゃないけど、怒ってかんしゃん起こしている時は困ってしまう」「Sちゃんは、怒ってるママも好き。あっ、でも、ママが怒った時、私言い返して文句を言っているけどなぁ」「そっか、ママが怒っても怖くないの?」「うん。怖くないよ」「そうなんや。ママのね、心の中にもトゲトゲの部分がたくさんあったりしてさ。SちゃんとRたんが怒った時でも、大好き!ぎゅーってまだできないことが多いの。ごめんね」「うん。ママ、この歌いいね。なんか心がつながったような気持ちになる歌やね」 って言いだしたので、 「何と心がつながった気がするの?」 って聞いてみた。するとSちゃんは、Sちゃんと私を指差しして笑った。
 私はまだ怒りんぼママで、二人の気持ちを抱きしめてあげることができず、悲しい寂しい顔をさせてることがあるけれども、Sちゃんのこのことで、Sちゃんは心豊かに育っているんだって、嬉しくなった。