ぐずる

「ぐずりや泣きの多い娘と」

 3歳(姉)と1歳(妹)の2人の娘がいます。姉は、赤ちゃんの頃からぐずりがひどく、抱っこをしても体を反らせて泣きまくり、誰も手が付けられない・・ということが多々ありました。

 姉がちょうど2歳になる頃、妹が生まれたのですが、妊娠中から出産前後にかけてはさらにそのぐずりがひどくなり、機嫌がいいときのほうが少なく、たいていは駄々をこねていたり、ぐずっていたり、号泣していたり・・という状態でした。機嫌を直すために、手を変え品を変え・・色々とやってみるのですが、ご機嫌な状態は長くは続かず、私もほとほと手を焼いていました。

 今思えば、当時は私の妊娠により、情緒不安定になっている娘の気持ちを考慮していたつもりでしたが、自分の中では、やっぱり私自身、そして周りのおとなたちの大変さばかりがクローズアップされて、いつもイライラしていました。こんなにイライラしていたら胎教に悪い!と思ってさらにイライラ・・そんな悪循環を抱えたまま出産、そして怒涛のような2児の子育てへ突入・・。

 幸い妹があまり泣かず、手がかからなかったので救われましたが、それでも毎日、姉を怒鳴っては自己嫌悪・・と、またしても逃げ場所のない悪循環の中での生活でした。出産と前後して引越しをしたため、私自身にも友達ができず、本当に孤独感と絶望感の中で、涙が止まらなくなることもよくありました。

 そんな状態が半年ほど続き、姉が2歳半になった頃、突然、そう、本当に突然、それまでのぐずぐずが嘘のように、娘は、急に聞き分けのよい、いわゆる「よい子」に変身してしまったのです。言ったことはちゃんと守り、だめと言われたらやらない。本当に同じ子?と不思議に思うと同時に、子どもの成長の素晴らしさに感動しました。

 しかし、もう一度転機が訪れました。4月になり、娘は4年保育の幼稚園に通い始めました。園で我慢している分、家に帰るとわがまま放題。理由があるわけじゃなく、とにかく何もかもが気に入らない。早くお風呂に入れて寝かせてあげよう・・という親心なんて、分かるはずもなく、お風呂に入らないといっては号泣。しかも園での生活に慣れてくるに従い、今度は園でもお友達に意地悪をしたり、いたずらをしたり、さらには目が痛いと頻繁に言い出し、目を細めるしぐさをするようになりました。病院にも連れて行きましたが、原因は不明。きっと精神的なものだろうな・・園に通うのをしばらく見合わせようか・・と悩んでいるときに抱っこ法に出会いました。

 最初はHPを閲覧するだけでしたが、興味を持ったので、数冊の本を読み、子どものぐずりやだだこねのメカニズム(?)、その際の対応などを知りました。本を参考に子どもへの対応を変えてみると、不思議と子どもが落ち着いたり、泣きながらでも我慢したり・・という場面が増えてきました。これはすごいぞ!と思った反面、今度はとても不安になり始めました。ぐずりや泣きは子どもからのメッセージだったのに、私はそれをちゃんと理解しようともせず、叱ったり怒鳴ったり、3年にも渡り、娘の心の中に大きな傷を残してしまったんじゃないだろうか・・。娘が聞き分けよくなったのは、単に自分の思いを胸の中にしまい込んでしまったからなのではないだろうか・・。

 そんな思いが募り、育児に対して全く自信がなくなってしまいました。娘の顔色を伺ったり、筋の通らないわがままを許してしまったりするようなこともあり、どうしても不安感を拭いたいと、和く輪く舎を訪れました。

 相談に行くことに全く抵抗がなかったわけではありません。むしろ、かなり躊躇しました。抱っこ法では最初、子どもは嵐のように泣く、と聞いていましたので、せっかくあの号泣時代が過ぎ去ったと言うのに、また子どもの号泣を見なければいけないのかと思うと、かなりブルーになってしまいました。でもそれが娘からのメッセージなら、受け止めてあげよう、と腹をくくって行きました。

 今までの育児のこと、娘のことなど色々聞いていただきました。私の何も否定されず、「反省することはないのよ、今からでも十分よ」って言っていただき、そこはかとない安心感の中で、涙が止まりませんでした。娘の泣きについても、「甘えるのが上手なのね」って言ってもらって、本当に嬉しかった。それまでは、泣くことをほめてもらったことなんて一度もありませんでしたから。

 抱っこが始まると、聞いていたとおり、娘は号泣。その姿に私も涙。娘は今までたくさんのことを伝えたがってきて、でもそれが伝わらず、いっぱい我慢もしたんだろうな、と思うと、かわいそうで、全て吐き出させてあげたいという気持ちでした。そして号泣が収まると私の胸にぴったりと寄り添って、しっかりと抱きついてきてくれました。まさに心も体も全て預けてくれている、と言った感じで、あれこそ「心の抱っこ」だと思います。その瞬間を思い出すだけで、私は幸せになれます。それは、まさに至福のひととき。

 どれくらいの時間抱き合っていたか分かりませんが、あんなに長い時間、娘が私にじっと抱っこされていたことは、生まれて初めてだったかもしれません。時間が過ぎ、もうそろそろ帰らなくては・・と思うのに、私も娘も離れたくなくて、なかなか帰れませんでした。

 抱っこの間、妹は泣きながらも横で我慢して待っていてくれました。泣き止んだ後の彼女の誇らしげな顔・・まだまだ赤ちゃんだと思っていた妹が、いつの間にか・・・。

 それから1週間。私の育児は劇的に変化しました!・・・と言いたいところですが、残念ながら、今でも子どものぐずりにイライラしてしまったり、疲れてるときに泣かれると叱ってしまったり、相変わらずの毎日。

 だけど、大きく変わったことがひとつ。抱っこがとても好きになったことです。あれ以来しょっちゅう、「抱っこさせて~」と子どもにせがんでいます。イライラしているときに子どもを抱っこすると、すーっと気持ちが楽になり、あぁ、癒されてるぅ・・という感じ。

 そしてもうひとつ変わったこと。それは子どもが今まで以上にとってもとってもと~っても愛おしくなったこと。子どものぐずりにも、「そうだ、その調子!いっぱい甘えちゃえ~!」と内心応援していたりして。

 これからもたくさんの壁にぶつかり、泣いたり苦しんだりすることもあると思います。だけど、抱っこ法があれば乗り越えていけるような気がします。今は、抱っこ法にめぐり合えて、本当によかったと心から思っています。