噛む

【一体感の大切さ】

 1歳2か月のCちゃんと1歳5か月のDちゃんの相談を、同じ頃に受けました。Cちゃんは物を噛んでしまう、Dちゃんはママや友だちに噛みついてしまうという、ちょっと似た相談でした。そしてどちらのママも、泣かれたりクズられたりするのがとても辛いというのも同じでした。泣いていいというのは本を読んで分かっていて、気持ちの我慢はさせたくないと思っているけど、日常では泣きを受け止められない。気持ちの我慢が気がかりの様子を見せるんだろうと思えるけど、どうしていいかわからない。泣いてもグズっても受け止められるようになりたい、という切実な願いもどちらのママ持っておられました。

 面談表に書かれた生育歴を見ると、CちゃんもDちゃんも、月齢の低い頃から、抱くと反り返って、特に横抱きは嫌いなそぶりを見せていたようでした。その頃は癒しの子育てにも出会っていなかったママたちなので、抱くと反り返ってイヤなそぶりを見せるし、そのまま抱いていれば泣くので、イヤなことはさせたくないと、縦抱っこや背面抱っこで過ごしてきたようでした。我が子が抱っこすると身を任せてくれて、穏やかな表情で見つめてくれたり、腕の中で安心したように眠ってくれたりすることで、子育ての苦労が報われるし、ママの自信にもなると思うので、しんどい子育てだったのではと、心痛く思いました。

 最初の2~3回の相談では、ママが泣かれるのが辛いし、反り返られるのを抱き続けるのも無理のようなので、援助者が代わって抱っこしました。そしてそばにいるママが辛くならないくらい1分とか3分とかよしよしして、ママに返して縦抱っこで落ち着くというのを、何回か繰り返しました。子どももママの様子を感じているかのようで、これくらいでいいというところで、ママの方に行こうとするのをキャッチもして、ママに返すのでした。

 そんな経過で2~3回の相談を経て、2人のママはまた同じ頃の相談で、大きな局面がありました。その相談では、それまでのように何回か援助者が泣きに付き合って、最後の最後にママの抱っこで反り返らずに抱っこされて可愛く泣けて、そして泣き止んで、ママの腕の中で身を任せてしっくり抱かれることができたのです。すぐに降りようともせず、もじもじもせず、ママの懐に包み込まれて、ママと子どもとの全くの一体感がそこにありました。この一体感をこそママはずっと求めて、得られなくて辛かったのだと思いました。

 一体感を実感された日の帰りは、「なんかできそうな気がする」と希望を持たれ、ママの顔が輝いていました。よかった!